岡山二人クリニック

 

「信頼は情報の共有化から」
を変わらず実践

岡山二人クリニック 理事長

林 伸旨先生

 

まだ日本に不妊治療専門クリニックが数少なかった1996年、岡山県岡山市に開院した岡山二人クリニック。当初から現在に至るまで、「信頼は情報の共有化から」という理念が貫かれています。
妊娠に導いたのは1万4,300周期以上、そして出産に至らず治療を終えた方にも「卒院証」を発行しています。

 


ホルモン代謝への興味から産婦人科へ

私の父は内科医、二人の兄は神経科医と小児科医です。同じ診療科は避けたいと思ったのと、学生時代にステロイドホルモンなどの代謝に興味を持ったのが、内分泌系に進むきっかけになりました。女性ホルモンや男性ホルモンも内分泌で、それが産婦人科、そして生殖医療へとつながりました。
1974年に産婦人科医になりましたが、当然、まだ体外受精は行なわれておらず、人工授精は精液を洗浄濃縮しないで、そのまま子宮に注入していた時代です。
1978年、英国で世界初の体外受精児が誕生しました。その後、勤務する岡山大学でも体外受精がスタートし、やがて市中病院でも行なわれるようになりました。しかし、大学病院ではさまざまな病気を扱っているので、不妊治療・体外受精をされる方に対してスタッフを固定して治療にあたることができませんでした。
患者さんのためには、不妊治療センターのような形で役割分担をしたほうがいいのではないか、自分が独立して不妊治療にあたるのがいいのではないか、と思うようになったのです。
そして、1996年、岡山二人クリニックを開院しました。タイミング法、人工授精、体外受精を行ない、やがて顕微授精、凍結胚移植など、治療の範囲が拡大しました。現在、医師は非常勤も含め7名、スタッフは総勢76名で治療にあたっています。

 


「二人」「望妊」の言葉に込めた思い

開院当時、「不妊治療は女性が病院に行くもの」と一般的には思われていました。そこで「治療は夫婦で取り組むことが必要」という思いを込めて、クリニック名を「二人」としました。
「二人」は、読み方によっては「ふにん」とも読めるかな、と。
それから、「望妊治療センター」としたのは、「望妊」という言葉のほうが、患者さんと私たち医療側が意識を共有できると考えたからです。不妊治療といっても、実は不妊ではなく、これから授かるかもしれない。そのための検査や治療をするのですから、「望妊」の言葉のほうがしっくりくると思ったのです。

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チーム医療で信頼される医療提供を

カップルの要望は「子どもがほしい」と大筋ではひとつでも、精神的・身体的・経済的な負担、また理解や希望は個々によって異なります。そこで重要なのが、チームでの安心・確実な医療の提供です。
妊娠へ向けた治療は、患者さんの卵胞の発育に合わせて進みますので、その方ごとのプロトコール(治療計画)を作り、それを医療者が共有し、患者さんがいつ受診されても統一した治療を行なっています。そのために電子化を進め、早くから電子カルテを導入しています。
通院患者さんは、基礎体温をパソコンやスマートフォンで入力・管理できるようにしており、それも当院と共有しています。また、通院患者さん専用のサイトを設け、個別の質問にも回答しています。
治療に入る前はもちろん、治療の途中も必要に応じて説明を行ないます。患者さんと情報を共有し、納得したうえで治療に取り組んでいただけるように努めています。
医師部のみなさん

 


チームで新しい目標を達成する。そのための日々の積み重ね

時間や環境とともに患者さんの要望は変わりますし、安全性や快適さの面からも常に改善したいと考えています。
今までのやり方を変えるのは、新しいチャレンジをすることであり、エネルギーが必要です。機関車と同じで、なにごとも走り出すときには特に力が必要ですが、走り出したらスムーズに流れ出し、やがて「以前よりよくなった」と実感するものです。これまで、ひとつずつ成功体験を積み重ねてきたことが新しいチャレンジをする力になっています。
スタッフには、他のスタッフのよいところを見つけて、私にメールで提出するように言っています。「Aさんがこうしていて、スムーズに進んだ」「Bさんがこれを手伝ってくれて助かった」など、小さなことでいいのです。
直ちに問題解決するわけではありませんが、こうした小さな積み重ねを基礎として、その先に改善があるのです。「改善点を見つけながら仕事をしよう」という視点が大事です。

 

20年勤続のみなさんと一緒に


治療を終える方には「卒院証」を手渡す

当院では、治療を終えられた方に「卒院証」をお渡ししています。妊娠・出産された方、そして「治療をやめる」というお申し出があった方に直接お渡しします。
私たちも力を尽くしたけれど、現在の医療では患者さんの希望にお応えできなかった。お互い信頼してやってきたのだから、「もうやめることにした」と言っていただいたほうが、私たちもありがたく思います。
毎年12月には、卒院された方とご家族を招いて、餅つき大会をしています。この日は、お子さん連れもOK、もちろんカップルだけでいらっしゃる方もいます。もう22回目を迎え、毎年400名くらいの方がいらっしゃいます。

 


不妊治療をしている人、妊活中の人に伝えたいこと

治療に対する「生産率」を確認しましょう。生産率とは、治療を開始して出産に至った割合です。
妊娠率や着床率ばかりに目がいきがちですが、残念ながら流産することもあります。日本産科婦人科学会では年齢ごとの妊娠率・流産率・生産率を公開しています。
また、通院先の医療機関でたずねてみるといいでしょう。
こうした情報を把握したうえで、自分たちの治療をどうするか、考えていただきたいですね。

 


PASサポーターになったきっかけ、Fineに期待すること

妊活をするカップルにとって必要な存在だと思うからです。
これまで、本当によく頑張ってこられました。患者さんのために、変わらぬ姿勢で活動を続けてこられたことに頭が下がります。
今後のFineに期待するのは「カップルの意見を行政に反映!」です。これからも患者さんのための活動を続けてください。

 

HP:http://www.futari.or.jp

ブログ: https://ameblo.jp/futari929