一般社団法人 統合医療生殖学会

東洋医学と西洋医学の両面から
妊活中の人をサポートしています

一般社団法人 統合医療生殖学会

事務局長 柳田浩二さん

 

不妊で悩む人や妊活中の人を東洋医学と西洋医学の両面からサポートする、一般社団法人 統合医療生殖学会。

漢方薬局の薬剤師さんをはじめ、医師や鍼灸院の方など、
全国で約700名の会員が活躍しています。

事務局長の柳田浩二さんにお話を聞きました。


子宝カウンセラーの会として、2007年に設立

当会は、不妊に悩む方々を東洋医学と西洋医学の両面からサポートする団体として、2007年9月に設立しました。「常に不妊に悩む方々の心に寄り添い行動する」を理念に活動しています。
会のなりたちは、漢方薬局でカウンセラーをするメンバーが「子宝カウンセラーの会」という勉強会を行なっていたのが始まりです。メンバーが数100人となったことや不妊治療専門クリニックの院長とのご縁を得て、統合医療のさらなる学びと普及のために社団法人格を所得しました。
会員の約半数は薬剤師や登録販売者ですが、医師や看護師、鍼灸院のスタッフなど、多様なメンバーで構成されています。西洋医学である不妊治療、体づくりによって妊娠をめざす東洋医学、その両方を取り入れた統合医療を実践し、最短で妊娠を目指すのが大きな特徴です。
おもな活動としては、3カ月に1回(年4回)、学術集会を開催し、不妊治療専門医の講演や妊娠症例の発表、情報交換などを行なっています。
また、全国各地で妊活セミナーを開催しています。私たちの漢方薬局にいらっしゃる方の9割以上が不妊治療をされています。
セミナーでは、最新の検査方法など不妊治療の最前線の情報を提供するとともに、東洋医学の面からは薬膳や食事、生活習慣の見直しなどについてお話ししています。


漢方薬はその人に合うものを選択。
妊活には生活の見直しも大事。

漢方薬局では、体の状態や食事・睡眠など、日頃の生活について、くわしくお話をお聞きします。たとえば冷えがあれば、その原因はどんなところにあるのかを探り、体質や生活状況から、その方に合った漢方薬やサプリメントを選びます。
しかし、漢方薬を飲めば必ず卵の質がよくなる、というものでもありません。同時に生活の見直しも必要です。
朝食をとらなかったり、甘い物をとりすぎたりしてホルモンバランスが乱れている方もいます。
また、妊活というと妊娠することに目がいきがちですが、赤ちゃんを産む、子どもを健康に育てる、成長を見守る・・・というように、長い視点で考えて妊活に取り組んでいただきたいと思います。

 


体のケアと心のケアをする

この仕事のやりがいは、やはり患者さんに赤ちゃんが授かったときの喜びです。一方で、どんなに力を尽くしてもなかなか赤ちゃんが授からない方々がいらっしゃるところは、この仕事のむずかしい点です。
また、子どもができないのは女性の問題と思われがちですが、女性は相談するところがなくて、ひとりで悩んでいらっしゃることが多いです。
私たちが「カウンセラー」と名乗っているのは、体のケアとともに心のケアも大切にしているからです。
ですから、カウンセリングでは愚痴をたくさん言っていただいてかまいません。ストレスが強いと、体は女性ホルモンのエストロゲンよりも抗ストレスホルモンのコルチゾールの分泌を優先してしまい、ホルモンバランスが崩れることもあります。
妊活のストレスという悪循環から抜け出す機会をつくるのも、私たちの役目だと思っています。


不妊治療をしている人、妊活中の人に伝えたいこと

妊娠は「偶然×必然」という、かけ算と考えて欲しいですね。
「必然」は努力すること。食生活や生活改善、漢方薬、病院に通うなど、いろいろありますが、ほとんどの方は、すでにできる努力をされています。
すると、残るのは「偶然」です。
いつ妊娠するかは誰にもわかりません。やれる努力をしたら、あとは毎日を楽しく、ニコニコ笑って過ごして欲しいのです。妊活中の方はまじめな方が多いので、力を抜いて、ぜひ“新婚生活”のように毎日を楽しんでください。

 


PASサポーターになったきっかけ、Fineに期待すること

より多くの不妊に悩む方々とのご縁を広げたいと考え、FineのPASサポーターになりました。Fineは、日本ではこの分野で傑出した団体だと思います。その団体に私たちは経済的に協力できたらと考えました。
今後は、妊活セミナーや学術集会などで、当会とコラボレーションできれば、ありがたいですね。

 

HP:http://www.kodakara-c.com/

Facebook:https://www.facebook.com/kodakara.Counselor/

高橋ウイメンズクリニック

 

患者さんと喜びを共有する
仕事と喜びが一致する人生は幸せです

高橋ウイメンズクリニック
高橋敬一先生

 

千葉市初の不妊治療専門クリニックを開院して20年、これまで15000人以上の妊娠をかなえてきた高橋ウイメンズクリニック・高橋敬一先生。

座右の銘は「継続こそ力なり。問題は常に具体的である。」といいます。日々の診療で心がけていることとは?

 


小学生で豚や牛のお産を体験


千葉県房総半島の東岸、九十九里浜近郊の田園都市(ここはいつも強調します)で三人兄弟の長男として生まれました。実家は米農家で米の販売もしていました。のどかな田園都市、要するに、田舎の農村で、豚や牛やニワトリも飼っていました。
家畜のお産は自然分娩がむずかしいため人が手伝うのですが、私も小学生の頃から、ニワトリの卵を孵したり、家畜のお産に立ち会い、子豚や子牛を取り上げていましたよ。
当時はもちろん、自分が産婦人科医になるとは思ってもいませんでした。その頃の夢といえば、科学者になること。学校の授業も理科や数学、英語が得意でしたね。中学生のときにはロボットに興味があり、工学部を目指していました。

人間のお産を1回も見ないまま、
産婦人科医に



医師になろうと決めたのは高校生のときです。人に直接関わる仕事がしたいと思い、考えついた職業は、医師、教師、弁護士。その3択から医師を選び、医学部に進学しました。
大学6年生のとき、社会的なつながりが深い診療科に進みたいと考え、産婦人科か精神科、どちらにするか悩みました。結果的に産婦人科を選び、国立病院医療センター(現・国立国際医療研究センター病院)で研修医生活が始まったのですが・・・・・・。
「人間のお産を1回も見ないで、産婦人科医になりました」
研修医病院の自己紹介で私がそう言ったとき、婦長さんの顔が引きつったのを、今でもはっきり覚えています。
大学の産婦人科の教授が「学生はお産を見る資格はない」という考えで、私はお産に立ち会ったことがなかったのです。
研修医として勤務し、すぐにお産に立ち会い、34カ月後からは先輩医師といっしょに、1年が過ぎた頃からひとりで、赤ちゃんを取り上げるようになりました。
私がお産につくときには、婦長さんが分娩室に飛んできて、それが2年くらい続きましたね。


新しいことに魅力を感じ、不妊症の道へ

医師になって3〜4年経った頃、ひと通りの診療ができるようになると専門領域をどの方向にするか、考え始めました。
産婦人科の領域は大きく分けると「がん」と「産科」ですが、がんは悲しい思いをすることが多く、自分には向いていないと感じました。産科も好きでしたが、当時、日本で体外受精成功の話題があり、不妊症について勉強してみたいと思ったのです。
新しいことというのは、上の人から教えてもらうのとは違い、自分が勉強することが、これから新しい歴史になる。自分で道を作っていくというのは、とても刺激的でウキウキするもの。これは自分の性に合っていました。
その頃、虎の門病院に当直のアルバイトに行っていました。当時、体外受精を行なっていたのは大学病院ばかりで、民間病院は虎の門病院だけ。たいへん先進的だったのです。
定期的なミーティングがあり、その日に当直を入れて、お産のない時間はミーティングに参加させてもらいました。これがたいへん勉強になり、ますます不妊症治療に興味を持ちました。
やがて、産婦人科の先生が辞めてポストが空くということで、お声をかけていただき、1989年に虎の門病院に移りました。その後、米国・ワシントン大学(シアトル)に1年間留学してクラミジア感染と不妊症の臨床研究も行ない、トータルで10年間虎の門病院に在籍しました。
私の専門は不妊治療ですが、患者さんの病気はさまざまです。がんの勉強をしていないのに診察するのは、患者さんに申し訳ないと思うのと、あれもこれもやって中途半端になってしまう危惧もありました。
そして、虎の門病院を辞めて、千葉市で最初の不妊治療専門クリニックを開院することにしたのです。

開業後はスピード感を重視し、
1万5000人の妊娠へ

開業後は、不妊治療に専念でき、スピード感の違いを感じました。
大きな病院ではやりたいことがあっても、システムの関係で実現するまでに時間がかかりますが、開業後は自分がやると決めればすぐにとりかかれます。それが1万5000名以上の妊娠につながっているのだと思います。
クリニックの特徴として、ART(体外受精)はもちろんのこと、それ以外の可能性も常に心がけて、治療を進めています。
新しい命の始まりに関われることに、本当にやりがいを感じます。なかなか妊娠されなかった方が妊娠なさると、本当にうれしいですね。その一方で、全ての方が妊娠されるわけではないことや、体外受精では妊娠の可否がはっきりと出るので、厳しさを感じます。
もちろん、一番つらいのは患者さんです。できるだけ皆さんが納得の得られる診療を心がけたいと思っています。

「仕事」と「喜び」が一致する人生

お子さんを授かったとき、家族の方はとても喜びます。
あるとき、2人目の治療で来られた患者さんが、お子さんの写真を私に見せながら「(子どもが生まれて)人生、本当に変わりました!」とうれしそうにおっしゃいました。
その喜びを共有できるのはとてもうれしいですし、私が今、存在している意義、仕事をしている意味を実感します。
仕事、イコール自分の喜び。それが一致しているので、私はとても幸せだと思います。

不妊治療をしている人、妊活中の人に伝えたいこと

妊娠への治療法は、ひとつとは限りません。
体外受精に進んだとしても、それしかないと決めるのではなく、さまざまな可能性を考えながら治療を進めてはいかがでしょうか。

PASサポーターになったきっかけ、
Fineに期待すること

患者さんは、自分ひとりで孤独を感じていても、ご主人以外にまわりに相談できる人がいません。患者さんの精神的なサポートは必要だと思いますが、我々が直接行なう余裕がないのが実情です。
Fineには、そうした方が相談できる窓口があり、それに大きな意義を感じます。心の拠り所になるのではないでしょうか。
今度期待することといえば・・・・・・、すでにFineは、私では考えられない活動を想像以上の規模で行なっています。
そうした意味では、今までと同様に、患者さんに寄り添った活動を続けてください。それが、さらに活動を拡大していくのではないでしょうか。

 

 

HP:https://www.takahashi-w-clinic.jp/

明大前アートクリニック

クリニックでは、朝の始業前にコーヒーをネルドリップで淹れています

 

人生をかけて治療する患者さんを
真剣にサポートしたい

 

明大前アートクリニック院長 北村誠司先生

 

総合病院や不妊治療専門クリニックで、約30年にわたって不妊治療に携わってきた北村誠司先生。一人ひとりの患者さんに向き合う理想の診療を目指して、2018年2月に東京・明大前に明大前アートクリニックを開院しました。


子どもの頃、歯科医なろうと思った。
母の歯を治してあげたかったから

小学生の頃は足が速いのが自慢で、野球やサッカーに明け暮れていました。当時の男の子の多くが憧れたように野球選手になりたかったのと、歯科医もいいな、と思っていました。おふくろが歯が悪かったので「それを治してあげたい、喜んでほしい」という思いからです。
しかし、小学校高学年になって中学進学を考えたとき、いくつか検討した志望校には歯学部がなかった。そこで両親の勧めもあり、医学部がある慶應義塾普通部を志望しました。医師といっても、まだ漠然としたイメージでしたね。

医局の雰囲気が好きで産婦人科へ。
命を生み出す医療に出会い、「自分の道はこれだ!」と確信

慶應義塾大学医学部6年のとき、外科や泌尿器科など、さまざまな診療科で臨床実習をしました。産婦人科を選んだのは、医局の雰囲気がとてもよかったからです。楽しくて優しい先生が多かったですね。
医師になって2年目に、重症患者さんに対応する3次救急病院に赴任しました。がんで治療をしても治らずに亡くなる方々に向き合い、医師として無力感に襲われました。そんなとき、産科で新しい命の誕生に触れると、気持ちが癒やされることが多かったですね。
その後、赴任した済生会中央病院は、当時、東京で体外受精を行なっていた三つの施設のうちのひとつ。そこで、精子と卵子という細胞から命を生み出す生殖医療に出会い、「自分の道はこれだ!」と確信しました。その後荻窪病院、その不妊治療部門である虹クリニックを経て、20182月に明大前アートクリニックを開院しました。トータルで約30年、生殖医療に携わっています。
病気を治療してよくなるのは産婦人科も他の科も変わりませんが、生殖医療が他科と違うのは、「新しい命を生み出す」こと。そのお手伝いをして、患者さんの期待に応えることが、この仕事のやり甲斐であり、醍醐味ですね。

 

行きつけの居酒屋の前で。休日は自転車で多摩川沿いをサイクリングしています。

日本酒が好きですが、
万全の体調で診療にのぞむために飲むのは休日前だけ

日常でホッする時間は、お酒を飲んでいるときです。日本酒やワインが好きですね。特に日本酒は、複雑な味や香りを楽しめるところがいいですね。でも、飲むのは休みの前日だけです。
万全の体調で仕事をするために、平日はお酒を飲まずに就寝します。体調がよく、心身に余裕がある状態で診察できれば、患者さんの様子を深く読み取ることができ、気づいたことがあれば対策もとれます。
患者さんは人生をかけて治療をしていると思うので、こちらも真剣に、命がけで治療にあたります。

朝はコーヒーを飲みながら診療の準備をするのが日課。
患者さんのために、できるだけのことをやりたい

朝は7時頃にクリニックに出勤して、ネルドリップでコーヒーを淹れています。患者さんが来るまでの間、コーヒーの香りの中で仕事の準備をするのが日課です。クリニックにはコーヒーグッズもいろいろ揃えていますよ。
クリニックはワンフロアで、患者さんとスタッフが接しやすいと思います。患者さんのためにはできるだけのことをやろうという姿勢で、男性不妊には専門医が対応し、また心理カウンセラーに相談できる態勢もととのえています。

不妊治療や妊活中の人に伝えたいこと

ご自分たちの納得のいく治療を進められるとよいと思います。そのためには、自分たちの希望を、しっかりと医師に伝えることが大事です。わからないことは、医師やスタッフに遠慮なく聞いてください。
患者さんが声をかけやすいように、私たちスタッフは日ごろからコミュニケーションをとることが大事だと思っています。そのきっかけになればと、自分のブログでは食事やサイクリングなど、プライベートの話題も書いています。家族を話題にしたときには、妻に注意されることもありますけれどね(笑)。

PASサポーターになったきっかけ、Fineに期待すること

Fineが取り組む活動に共感する部分があったから、PASサポーターになりました。これからも、不妊治療患者さんたちの道しるべとなってほしいですね。

明大前アートクリニック
HP:https://www.meidaimae-art-clinic.jp
ブログ:https://ameblo.jp/kitasama8612/